Joyoliving News : 2020年08月24日掲載

サラリーマン、 インドで歌を詠む

つくばの歌人・須田覚さん

“会社で働きながら、歌を詠む”―。人呼んで「サラリーマン歌人」の須田覚さん(つくば市在住、54歳)が、初の歌集となる『西ベンガルの月』(書肆侃侃房刊)をこのほど出版した。掲載の短歌やエッセーは、単身赴任先のインドの工場で詠んだものが中心。現地滞在中のさまざまな出来事を31音で表現した作品は、須田さん自身の「体験記」でもある。

季語が不要な短歌は、「5・7・5・7・7」の計31音の中にさまざまな情景や心情を詰め込みながら言葉を紡ぐことができる。「表現が自由なので、適切な言葉を探す時間が楽しい。単語や視点を変えたりしながら何度も推敲を続けていると、しっくりとくる表現が見つかる瞬間がある。これが醍醐味」と話す須田さんが短歌に接したのは、約10年前のことだった。

きっかけは「手術」


「歌集からインドの“匂い”を感じてもらえたら」と須田さん(7月30日=TSUTAYA LALAガーデンつくば)

1965年長崎県長崎市生まれ。高校進学後、読書に開眼した。夏目漱石や三島由紀夫に親しんだが、受験勉強中は自制し「しばらくは参考書を愛読書にしていましたね」。無事に大学への入学を果たすと、長らく封印していた読書を解禁。古本屋で興味を持った本をまとめ買いし、読みあさった。

また、大学4年間では500本余りのさまざまなジャンルの映画を鑑賞。ボキャブラリーを大いに養った。「一時は映画に携わる仕事に就くことも考えた」ほど夢中になったものの、大学卒業後は身に付けた知識を十分に生かせる総合機械メーカーに入社。土浦工場に配属され、エンジニアとして生産技術業務に従事。キャリアを積む中で、たびたび海外出張や駐在の任も担うようになった。

須田さんが短歌に魅せられたのは2008年冬。ある手術を受けた後の自宅療養中に時間を持て余していた時、ふと思いつき何気なく1首詠んだ。子どものころから好きだった詩を書いている時とは違う感覚に包まれ、心が躍った。

詠んだ歌を日経歌壇に投稿してみると、見事掲載された。「才能あるかも」とその気になった。以来、前夜に見た夢の内容を起床時にメモしたり、通勤や出張での移動中などに湧き出る言葉をスマホのメモアプリに書き留めた。

週末に投稿できるレベルまで歌を仕上げ、日経ほか毎日歌壇、NHK短歌などにこれまで約1000首投稿。約100首が採用になった。「投稿する中で出会った加藤治郎さんや穂村弘さん、岡井隆さんら短歌界の重鎮からも大いに影響を受けました」

インドで詠む歌


ワラナシのガンジス河の前で手を合わせる(須田さん提供)。この体験後詠んだ歌は「体より心に時差があるらしいガンジス河の流れるつくば」

子どものころに漠然と思い描いた「本を出したい」という夢への一歩を踏み出したのは約3年前。書きためた歌の出版を思い立ち、書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)編集者の田島安江さんと出会った。

出版を前提に話を進めていく中、それまで出張で何度か訪れていたインド西ベンガル州カラグプル工場への赴任が決まった。「せっかくだから、現地で詠む歌の本を作ろう」。企画が固まった。

 『西ベンガルの月』には、遠く離れたつくばの妻を思い描いた「白濁の記憶は膜に閉ざされて愛したひとつひとつが君だ」など現地で詠んだ208首、インドでの衣食住や旅のエッセーほか、日本で詠んだ56首も合わせて掲載した。

折からの新型コロナウイルス感染拡大により今年4月に帰国し、現在はつくばの自宅とインドをオンラインでつなぎ仕事を進めている須田さん。今回の発刊にあたり「西ベンガルの熱や湿度、駐在員ならではの暮らしの描写などを感じ取ってもらえれば」と話している。

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