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2019年12月23日(月)

83歳で現代童画展「新人賞」受賞

土浦市在住の菅野 武弘さん

先月東京都美術館を会場に開かれた第45回現代童画展で、土浦市在住の菅野武弘さん(83)が「新人賞」を受賞した。生活優先だった子ども時代に封印した絵描きの夢をかなえたのは、よわい65の時。18年が経過した今なお湧き上がる創作意欲に後押しされ、画人暮らしを楽しんでいる。


来春の美術展に出品する予定の作品に取り組む

絵描き仲間から勧められ、先月東京で開かれた第45回「現代童画展」(現代童画会主催)に初出品。全国から集まったアーティストの作品約300点から、見事新人賞に選ばれた。

同展は新しい「童画」(子ども向けの絵画)の創造と発展を目指す目的で1976年に第1回目が開催。今回入選の報が届いた際、自らの年齢も顧み「何かの間違いかと。しばらくは実感が湧きませんでした」。

描きたかった


現代童画展入賞作「筑波晩秋」

岩手県生まれ。子どもの頃から絵を描くことが好きだったが、苦しい家計が影響し「本格的に取り組める余裕はありませんでした」。

中学卒業後、高校には進学せず単身上京し就職。上野・桜木にあった下宿から入谷まで、美術館が点在する上野公園を横目に仕事に通った。「いつの日か、自分の絵がこんなすばらしい美術館に飾られたらいいな」。ひそかに大きな夢を心に描いていた。

仕事が安定し生活が落ち着いてきた頃、定時制高校に入学。仕事後の勉強は疲れなどで厳しいこともあったが、生来の真面目な性格で取り組み4年後に卒業。1963年茨城に移住し、2人の子宝にも恵まれた。

絵を再開するきっかけは65歳の頃に訪れた。「仕事と時間に余裕ができたんですよね」。何かを始めようと考え、すぐに浮かんだのが絵だった。ずっとふたをしていた思いに火が付いた。「描きたい」。

誰かに師事したりせず、自分自身でキャンバスに向き合おうと決意。「やっと絵が描けるんですから。自由にやりたかった」。70歳で仕事を離れてからは、寝食を忘れて没頭する日も多数。6年ほど前からは小さな美術展で入賞するなど、少しずつ認められ始めた。

近場が「宝」


日本百景の岩手県猊鼻渓(げいびけい)は故郷の思い出の一つ

菅野さんの得意ジャンルは風景画。使う絵の具はホワイトとオーロラピンク、イエロー、グリーン、ブルー、インディゴ(藍色)の6色のみ。数種の絵の具を掛け合わせることで大抵の色は具現化できるといい「自分のセンスで色を作り出すのも絵画の楽しみの一つです」。

最初は題材を求め遠方まで出掛けていたが、ふと地元の霞ケ浦や桜川、筑波山などの自然をキャンバスに乗せてみると創作意欲があふれるように湧き出した。絵の主題として自らが求めていたのは特別なものではなく、見慣れた風景だということに気付かされた。

83歳となった現在も、陽気が良ければ気ままに車を走らせる。さすがに無理は利かなくなってきたが「近場なら大丈夫。モチーフは家にいても見つからないから」。直感で「ここだ」と思ったら車を停め、スケッチと写真で構図を残す。アトリエでじっくり絵に昇華させていく過程は絵描きの醍醐味(だいごみ)と実感している。

3年前に大病を経験したものの、手術で乗り越えた。「まだまだ作品にしたい風景が地元にはたくさんある。これからもインスピレーションを大切に、自分ならではの絵を描き続けたい」

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