常陽リビング社カルチャー教室ブログ
一面記事
イベント記事
グルメ記事
ショッピング記事
美容記事
ハウジング記事
バックナンバー
現在位置 : トップ > 常陽リビング一面記事 > 土浦と大曲、わが師の恩〜北島義一が遺したもの
2019年10月25日(金)

土浦と大曲、わが師の恩〜北島義一が遺したもの

10月26日、土浦の花火

戦後間もなく再開された「土浦の花火」や日本の花火業界をリードした実業家北島義一(1908〜1979)の業績に、改めて光が当たっている。全国花火競技大会(秋田県大仙市・大曲の花火)との縁や花火師の地位向上、安全な大会運営への不断の努力―。10月26日(土)に行われる土浦全国花火競技大会に合わせ、北島翁の業績を二人の証言から振り返る。

二つの賞


【北島義一】
1908年(明治41)、黒子村(現在の筑西市)生まれ。 昭和20年に土浦火工株式会社(土浦市大和町)を設立。北海道から中部地方まで全国各地の花火大会を受注し、最盛期には50人を超える従業員が在籍した。同社で修業した花火師の師弟らは、その後全国各地で活躍した。

1961年(昭和36)、「土浦の花火」に通商産業大臣賞(現経済産業大臣賞)の授与が決まった。焦ったのは同じ競技大会の「大曲の花火」関係者。通産省に問い合わせると「2カ所に出すことは権威に関わる」とにべもなく断られた。この時口添えしたのが土浦火工社長で日本煙火工業会長だった北島義一。2年後、「大曲」にも同賞の授与が決定した。土浦市立博物館学芸員の関口満さんは「北島さんは土浦さえ良ければではなく、花火師の名誉や地位向上のために幅広い視野を持っていた」と話す。

時は流れ2000年(平成12)夏。土浦市役所に「大曲に内閣総理大臣賞の付与が内定」とのニュースが飛び込んだ。当時市産業部長だった菅澤秀男さん(75)は「一言で言えば、カチンと来た」。周囲のプレッシャーもあり何度も経産省に掛け合ったが「賞は1カ所。権威に関わる」と一蹴された。事態を打開したのは他でもない「大曲」の関係者だった。「土浦さんに恩を仇で返すようなことはできない」。大曲の関係者は口をそろえた。同年秋、土浦の花火総合優勝者に内閣総理大臣賞杯が贈られた。


夜空に咲くスターマインは土浦の花火の花形(土浦市商工観光課提供)

自他ともに認める「花火太郎」の菅澤さん。大会運営には通算21年6カ月関わった。実行委員会形式の運営変更に携わり、保安距離や夜間の騒音に係る地元説明会を開き、大型ショッピングセンター出店に際して大会当日の休館を求めた。華やかな表舞台の裏側に、地味な作業が山積みだった。そんな時、ふらっと市役所に現れた北島に言われた。「でたらめ(いい加減)やっちゃダメだよ。土浦は日本一なんだから」。背筋が伸びる思いだった。

毎年、大赤字を出して1年間磨き上げた技術を披露する花火師たち。菅澤さんは、打ち上げに係る費用の一部を助成する制度設立に向け陣頭指揮を執った。運営側と花火師、互いの程よい緊張関係の下で切磋琢磨することが日本一の競技花火大会を続ける鍵だと思った。運営の責任者として、大事な判断をする時には、いつも北島の口癖がよみがえった。「でたらめやっちゃ、ダメだよ」


通商産業大臣賞のトロフィー(右)と内閣総理大臣賞杯(土浦市立博物館で展示中)

北島が先べんをつけた通産大臣賞トロフィーと内閣総理大臣賞杯は、11月10日(日)まで土浦市立博物館で展示されている。午前9時〜午後4時半。10月26日は入館無料。

 

 

安全性


「昨年の中止の判断は正しかったと思う」と今野さん(土浦市立博物館提供)

「私ども寒冷地での花火作りの基礎は、すべて北島さんに教わった。面倒見の良い方でしたから」

「土浦」の創造花火部門優勝の常連で北日本花火興業(秋田県大仙市)3代目の今野正義さん(78)は懐かしそうに口を開く。

家業を手伝い始めた昭和30年代、同社の課題は「通年仕事できる環境」だった。11月末からリンゴの花が咲く頃まで雪深い秋田県。花火玉が乾燥できず、火薬を扱う工場内での暖房など問題は山積だった。

知人を介し3年間、冬場だけ土浦火工に修業に出た。全国的に花火事故も多かった頃。土浦火工ではいち早く、少しの振動で発火しやすい塩素酸カリウムから安全な過塩素酸カリウムに切り替えていた。「北島さんは事故で息子さんを亡くされていた。安全への思いは人一倍でした」。


土浦火工の輸出用パンフレット(昭和40年代)。同社は市内宍塚に第1工場、上高津に第2工場があった(同館提供)

朝晩は北島家で食事し、バスで作業場へ。火薬の扱い方や作業工程ごとの建屋の造り、それらをつなぐ通路の役割などを目に焼き付け、40代で家業を継いだ。計画的な量産体制で雇用を増やし、繁忙期の夏場に大会をはしごする花火師の労働環境改善にも取り組んだ。

試し打ちを重ねて花火の質向上に努め、アメリカのディズニーランドで打ち上げる花火も受注できるほどに。「楽に、安全に、良い物を」がモットーの同社には東北一円の花火師が視察に訪れ、兼業農家だった今野さん一家も本業一本で食べられるようになった。家族経営だった工場は従業員25人にまで増えた。

花火玉の製作は今も昔も手作業が中心だが、作業行程の機械化や打ち上げのデジタル制御化は近年飛躍的に進歩した。それでも「100%の安全はあり得ない」と今野さん。

9年前に妻の看病で一線を退いて経営は息子と孫に譲ったが、工場内の点検は一日たりとも欠かさない。「作業服が乱れていたら注意します。日ごろの態度が火薬の扱い方や花火に向き合う姿勢などに表れますから。花火は作った人の性格が出るんです」。

土浦の花火は、今年も地元で結果報告を待つだけ。ただ、「息子のようにかわいがってくれた北島さんの墓参りだけは欠かすなよ、と息子と孫に言ってあるんです」。

1979年(昭和54)、大曲の花火大会では、北島の一周忌に合わせ追善供養花火を打ち上げた。

関連コンテンツ
Ads by Google


大人のプレミアムセミナー
最新の一面記事
  1. 「スラックライン」広めたい
  2. 本に新たな「命」吹き込みたい
  3. かすみがうら市“仲人業”登録者に好評
  4. 暮らしに「笑顔」を届けたい
  5. 被災者「心」のケアに従事
注目の記事
  1. 自分らしく生きる方法を学ぶ「生前整理・生き活®セミナー」が、12月19日(木)つくば山水亭で開かれる。
  2. 1960年代のバップジャズを堪能できる「村田浩&The Bop Bandジャズライブ」が、12月14日(土)つくばカーサで開かれる。
「常陽リビングニュース」最新記事
  1. クリスマスケーキを初販売
  2. きらめくブーケで愛を告白
  3. 12月29日、「つくばで第九」
  4. 龍ケ崎「まいりゅう」もライトアップ
  5. 9800円の宿泊忘年会2人から受け付け
つくばスタイルBlog
つくばエクスプレス沿線地域の魅力あるライフスタイルや地域情報をお届けします。
茨城イベントカレンダー
「常陽リビングニュース」アクセスランキング