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2019年7月22日(月)

弥栄の山河、再び

石岡・八郷の茶畑で紅茶作り

戦後、満州からの引き揚げ者が入植した石岡市八郷地区「中山開拓」の茶畑で、市民らが紅茶作りを楽しんでいる。その昔「乳と蜜の楽園」と喧伝された満州国に渡り、歴史に翻弄(ほんろう)された一家が営んだ茶園の主「細野のおばあちゃん」の、激しくも可憐な半生を関係者の証言から振り返った。


田畑や集落が一望できる旧細野茶園での紅茶作り=7月9日、石岡市小幡

不動峠から1キロ、八郷盆地を見下ろす山間部。朽ちた住居、製茶工場や職人寮跡が残る茶畑一帯は現在石岡市の管理地で、北村明久さん(70)ら市民有志7人が4年前から市の許可を得て紅茶作りを楽しんでいる。

きっかけは八郷町民文化誌『ゆう5号』(1996年発行、現在廃刊)の記事。満州から引き揚げ中山開拓で製茶業を興した家族の壮絶な奮闘記だった。茶畑が世間から忘れ去られて二十数年。北村さんはシノやつるに覆われた山肌にお茶の木を見つけた。

意地と清貧


(1)在りし日の細野富子さん(合田寅彦さん提供)(2)茶畑裏手の山に建つ「拓魂碑」。夫の喜平さんの歩みが刻まれている(3)びっしりと日々を記録した細野さんの日記帳。

戦後6年間、県の事業で開かれた中山開拓。燃料や木材など当時は「山が財産をつくる」といわれ、昭和30年代までに外地からの引き揚げ者や復員兵など20軒が入植。東向きの斜面で茶園を始めたのが細野富子さんの一家だった。

明治44年、古河市で製紙工場を営む裕福な家に生まれた細野さん。25歳で夫と大陸に渡り極寒の地で身を粉にして10年働いたが敗戦で国債は紙くず同然に、夫はシベリアに抑留された。

戦後家族と共に中山開拓で荒れ地を開墾。後年茶の刈り込み作業を手伝った中村重さん(86)によると細野家の母屋はランプ一つ、月に1000円も使わないほどの慎ましい生活で「道具でも茶菓子でも手作り。やると決めたら一途な人」だった。

昭和30年代に入ると経営は軌道に乗り始め40年には集落に電気も開通したが、一人息子が急死。その後「土から物を生み出す」生活の在り方も社会の潮流から取り残され、集落は急激な過疎と高齢化に悩まされた。

そんな中、共に支え合った夫が病死。葬儀を終え夜更けから明け方まで泣き通し、朝日が昇ると「さぁ頑張るぞ」と前を向いた。孤独な細野さんを支えたのは開拓魂だった。

財産の中から100万円を町社協に寄付し、茶畑裏の高台に夫の歩みと家族の歴史を刻んだ「拓魂碑」を建立。一人切り盛りした製茶業は夫の死後10年余りで廃業し、土地はすべて市に寄贈した。

八十八の夢


「細野さんは、満州での生活を生き抜いた自負のようなものと、少女のような観察眼を併せ持っていた」と語る石岡市の今泉文彦市長=7月1日、八郷総合支所

細野さんが『ゆう』の取材を受けたのはちょうどその頃。「満州時代の話が聞けるまで10日間通った」と話すのは、取材を担当し当時市職員だった今泉文彦石岡市長(66)。掲載後、終戦記念日には市役所にお礼の千羽鶴が届くようになり、それは細野さんが亡くなるまで毎年続いた。

1998年発行の『ゆう第7号』には「希望」と題された細野さんの詩が掲載されている。

わたしね/今日から生まれ変わって/一年生になったのよ/同級生よ/よろしくね

米寿を迎え、庭にミカンの木を50本植えて新しい生活を始めた細野さん。大陸で夢破れ、流れ着いた石岡の地で「いやさかの山河」にたどり着き、中山開拓で生み出した財産はすべて公に寄付した。

常々「土地は、子どもたちのために使ってほしい」と言っていた細野さん。朽ち果てた住居跡に残っていたのは、日々の営みを克明に記した数冊の日記帳と、国有林の有償貸付契約書だけだった。

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