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2018年11月19日(月)

夢をつかんで、手渡して

つくばで野球塾主宰 森田 丈武 さん

プロ野球のドラフト会議が終わりフレッシュな新戦力や選手の去就に注目が集まる中、つくば市内では元選手による子どもたち相手の小さな野球塾が開かれている。主宰するのは元東北楽天ゴールデンイーグルス内野手の森田丈武さん(37)。プロ生活では華々しい成績は残せなかったものの、子どもたちの「できた」の笑顔を糧に白球を追う小さな夢を支えている。


一人ずつ練習の出来を褒めたり注意したり。塾生は20人程度だが「たとえ100人に増えても一人ひとり名前を覚えますよ」

「肘はもっと内側に、バットは横になるように…そうそう、そのイメージで繰り返してみて」

すっかり日が落ち時折北寄りの風が吹く中、手取り足取りを交え少年に打撃フォームを教える。資材置き場の一角に手作りした練習場では、壁当てや市販の資材で作られたバッティングケージで薄着の子どもたちが体を動かしていた。平日週2日の野球塾には「もっと活躍したい」「まだまだ練習したい」という市内外の小中学生が集まる。「性格や体格などは皆違うから」と一人ひとり向き合い真剣な顔で指導していたかと思えば、学校での笑い話や年齢に関係無いぶら下がり競争で盛り上がる。時計はあっという間に終了時刻を指していた。

「開花」の面白さ

小学3年の頃に地元で野球を始めると間もなく投打で才能を発揮。バットを持てばボールを飛ばしたくて「いつもホームラン狙いでした」。ニコニコしながらダイヤモンドを走ると、応援席の家族も喜んでくれた。

甲子園出場への「近道」と考え高校数の少ない山梨県の強豪校へ進学。硬式への変化に加え、独特の厳しい上下関係や練習量にも戸惑った。2年で頭角を現すも甲子園出場はかなわず、同世代の「松坂フィーバー」も遠い世界の出来事だった。

当然のようにドラフト指名はなく、社会人野球などを経てアメリカ・独立リーグに挑戦するもチーム事情から約2年で帰国。「まだ若いからチャンスはある」と周りの励ましも受け努力を続けたが、気付けばプロ入りの目標に設定した20代半ば。実家で何気なく「もういいや」とこぼすと、父の檄(げき)が飛んだ。「お前に野球以外の何ができるんだ。親の迷惑なんて関係ない。野球で恩返ししてみろ」。昔からいい加減な姿勢に厳しく、夢を支えてくれた父の声に背筋が伸びる思いだった。

2006年香川県の独立リーグのチームに入団し、元プロたちの指導で大きな変化を遂げた。打撃の際の前足を上げるタイミングがその一つ。それまで2段階で軸足側に引き寄せるやり方だったが、「タイミングが合わせにくいだろう」との指摘で不要な動作と気付き、バットを構える位置や軌道も修正。その後の柵越え連発につながり「こんなに変わるものか」と目からうろこ。分かりやすくシンプルな指導をどんどん吸収し活躍が認められ、28歳で夢だったプロ野球選手になった。

みんな原石

初年はファームで主軸を務め1軍出場も果たしたが、年齢的な余裕の無さから自身を追い込む日々。約3年で戦力外通告を受け、引退後は妻子と帰郷し野球と無関係の仕事に精を出した。

慣れない激務で疲れていても「ウチの子の野球を教えて」と頼まれればつい体が動いた。仕事との両立に二の足を踏んだこともあったが、志を同じくする仲間の後押しで今春から定期的な塾としてスタート。バッティングケージは父のアドバイスを受けながら仲間と手作り。活動を知った知人を介して届いた中古の人工芝や打撃マシンを活用し、成長期に空腹で運動させないよう妻のアイデアで温かいカレーや焼きそばなどの「補食」も用意している。

来年からは県内の元プロ3人と野球チームを本格始動させ、勝利ばかりにこだわらず、実戦を通した成長を目指す。 「野球の醍醐味(だいごみ)はなんと言ってもホームラン。小さい頃は遠くに球が飛んでいくのがすごくうれしかった。子どもたちは皆磨けば光る原石だと思う。本物の技術を身に付け、一人でも多くの子に打ってほしいですね」

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