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2018年9月15日(土)

笑いの舞台に壁なし

広がる人の輪、落語会を初企画

「お願いがあります。目が見えないんで…出来るだけ大声で笑ってください」。アマチュア落語家で筑波技術大学に通う加藤健太郎さん(18)が、9月15日(土)つくば市内で初の落語会を開く。生まれつきの全盲をものともせず、幼少期から鍛え抜いた本格落語で交流を広げ、意識の差を埋めようと“笑い”を生かした講演などにも今後は力を入れていく。


憧れの一人は故立川談志さん。「はなしはもちろん、先を見通す力にも感心します」(写真は本人提供)

「落語はできても彼女はできない、たら福亭美豚(びとん)でございます」

自虐的なあいさつで「つかみ」はOK。お気に入りの芸名はつくば名産の豚肉になぞらえたわけではなく、故郷・新潟の盲学校小学部時代に恩師が付けてくれたもの。「幸福の福も入っているし、『美豚君』って気軽に呼びやすいでしょ」と、お腹をパンとたたく。

これまでに覚えたネタは約190。高座に上がれば「お客さんに楽しんでもらう」ことを第一に心掛け、公民館や福祉施設などでさまざまな年代の人と交流しながら積んだ舞台は300以上。若い人が多ければテンポ良く、お年寄り対象ならばはっきり、ゆっくりした口調で間の取り方にも気を配る。

「会場の反応ですか?すごくよく分かりますよ。時には分かりたくないぐらい肌で感じます」

見えなくても

とにかく「面白いもの」が好きな少年だった。6歳の頃、テレビで「お菊の皿」を聴き、録画して繰り返し再生した。盲学校の文化祭で初めて高座に上がり、会場が笑いに包まれた経験が強く心に残った。11歳からは地元で活動する師匠につき、基礎から技術を教わった。見て覚えられないため表情やしぐさは極められない。「ならば」と声の強弱や登場人物の演じ分けに工夫を凝らした。

毎年宮崎県で開かれる「こども落語全国大会」に初出場したのは中学の時。上位入賞も経験したが、見えようが見えまいが関係なく言葉で戦うことで交流を深めた同世代の仲間ができたことが一番の宝物だった。

意識の差を埋めたい

今春から筑波技術大学で鍼灸(しんきゅう)などを学んでいるが、キャンパス内では視覚障害だけでなく、聴覚障害の学生もいる。講義などを通し男女や国籍、肌の色、宗教などあらゆる差別の問題を知るにつれ自らの世界が広がっていくのを感じている。

日常生活では、買い物をする時に誘導方法を知らない人に体全体を抱えられバランスを崩したり、自分が欲しい商品と違う物が入っていたりなど困る事もある一方で、小学校の授業に招かれた際に「お着替えはどうするの」「テレビは見ているの」と無邪気な質問をぶつけられ、素直に相手を理解しようとする姿勢に心打たれることもあった。

当面の目標は学生落語選手権での優勝だが、「プロは目指さない」と決めている。障害のある人とない人の間に横たわる誤解や意識の違いを笑いで埋める講演活動に加え、将来は「ゲーム関係や車の自動運転など、障害者に役立つハードウェアやアプリケーションの開発に興味があります」。

せっかく茨城に来たのだから、地域の落研の学生らと交流したいー。そんな思いで初企画した落語会は、「NPO友の会たすけあい」が全面協力。自身の外出支援ガイドヘルパーを務める同NPOの佐藤文信さんなどが広報活動や事務局などを担い、地域で三味線や太鼓の演者も探してくれたほか、筑波大と茨城大の学生に加え故郷の仲間らも出演、自身はトリを務める。

「開催を通して、こうしてまた人とつながれるのがうれしいです。学生との新たな交流も楽しみ」という「落語会inつくば」は、9月15日(土)つくば市下岩崎のふれあいプラザで午後1時半から開演。入場無料、定員300人。

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