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2017年10月28日(土)

知り合い増えれば、助け合える

「特技」の預貯金、「共助」の地域通貨

かつて地域の中に当たり前に存在した近所付き合い。新しい宅地開発や住民の入れ替わりなどで「隣近所の顔も知らない」というケースも少なくない。そんな中、個人の特技を媒介にしてイベントを催し住民同士の出会いの場にしたり、仮想の地域通貨をやり取りすることで助け合いを創出し顔見知りを増やす取り組みが、各地で始まっている。

出会いの場所


「とくいの銀行」のルールは、対価を発生させないこと

取手市の井野団地内に“本店”を構える「とくいの銀行」には、小学生から90代まで延べ500件を越える個々人の「得意」が預けられている。

企画は、同市と東京藝術大学が「芸術のまち」を目指して始まった取手アートプロジェクトの一環として2011年にスタート。団地内にあるコミュニティスペースの一角には“ATM”が設置され、お金の代わりに「恋バナ、いくらでも聞きます!」「大正琴を少し」「精いっぱい変顔をします」といった項目がリストになっている。

周辺住民らは預け入れられた中から利用したい項目を引き出し、ボランティアスタッフの仲介で得意の提供者と日時や場所、内容などを交渉していく。

これまで音楽会や詩吟、俳句の会などが開かれたほか、7月の団地内の夏祭りでは写真撮影、バルーンアート制作、カラフルなゴムを編んでアクセサリーなどを作るレインボールーム制作の3つの特技がコラボレーションして、フォトコンテストやワークショップを行った。

利用者同士のマッチングがうまくいくことばかりではないが、「イベント開催までこぎ着けたときは、自分の特技を生かせてちょっと自信を深めた利用者の顔を見るのが楽しい」と市内に住んで20年ほどになるボランティアの添田恭子さん(57)。

今年は10月までで20件の利用実績があり、人々の交流がアート作品の一部になっている。企画発案者の深澤孝史さん(33)は「とくいの銀行はあくまで入り口。取り引きが活発になることで団地や周辺に住むさまざまな人同士が出会う場になればいいですね」。

助け合いのきっかけ


(上)地域通貨「ミーホ」の通帳には「村民はお互いを信じている」の文字
(下)マイナス残高でも取引できるのが特徴

先月、地域通貨「ミーホ」の交流会が美浦村地域交流センターで行われた。同村の会社役員・樋口明さん(66)が、「互恵協働社会」を提唱する前村教育長の門脇厚司さん(77)の助言を元に今年1月に企画。

交流会ではフリーマーケット形式で各家庭からの不要品が並び、アマチュア落語家の好文亭梅朝さんが落語を一席披露。高座のギャラ名目で「3000ミーホ」を獲得し、早速樋口さんが出品していた雪駄を値切りに値切って500ミーホで購入した。また、樋口さんのDVDを残高ゼロの門脇さんが500ミーホで買い「この前あごだしを買ったばかりだから、また借金生活。困ったねぇ」。

ミーホの「通帳」にはマイナス表記が並ぶが、草取りやごみ出し、犬の散歩など各自ができるボランティアで前借りして購入した商品やサービスの代金を返したり、残高を増やすことも可能で、「お返し」はまったく別の第三者でもよい。

樋口さんが地域通貨に興味を持ったのは、以前から「誰かが損をする椅子取りゲームのような」現行の貨幣制度に疑問を持ったから。「人口減でどの自治体も税収不足。実際のお金は村内で循環させ、行政サービスはご近所同士の助け合いでなるべく削減できれば最高ですね」。

課題もある。会員から集めた「できること」と「してほしいこと」のマッチングがうまくかみ合わないことや「ミーホで借金を背負うことで『どこかでボランティアをしなくては』と義務感に駆られるかも」と都内から参加する酒井達之介さん(27)は指摘する。

樋口さんは「ミーホは隣人に自分の時間を割くということ。地域通貨を使って困っている人のニーズを発掘し、最終的にはミーホの通帳がなくなれば良いと思っています」と話す。

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