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2017年10月23日(月)

「地産地消ワイン」着々

つくば市が特区申請

つくば市内でワイン用のブドウを栽培する個人事業者に追い風が吹いている。この秋、同市が国に「ワイン特区」を申請したためで、認められれば果実酒の年間最低製造量が大幅に引き下げられ新規参入が容易に。地域の特産物を使った新たな産業や観光資源の創出、新規就農者の増加や遊休農地の活用などに関係者らが期待を寄せている。

土地の力


「ブドウの品質や地域での雇用など、すべてにおいて安定的な経営をしたい」と話す今村さん=9月30日、つくば市六所のビーズニーズヴィンヤーズ

9月末の筑波山麓。今村ことよさん(守谷市出身、44歳)の1.5ヘクタールのブドウ畑では、今シーズンの収穫最終日を迎えた。

筑波大学で生物学を学び、都内の製薬会社に研究・開発職として勤務した今村さんは、ワイン好きが高じて40歳で退職し長野のワイナリーで栽培や醸造を学んだ。

退職前、筑波山麓の地質や気候データを調べたことがあった。日中と夜間の寒暖差こそ少ないものの南向きの斜面で、フランスのアルザス地方やイタリアのサルディーニャ島などと同様の花崗岩質土壌は豊富なミネラルを含み、水はけも良く、「ここで作ったブドウでワインを飲んでみたい」と思った。

風は一年を通して東西に吹き、垣根式のブドウ畑を抜ける風が病気を低減。2015年の就農から3年で4000本の苗木を植え、昨年はシャルドネやシラー、セミヨンを初収穫し、委託醸造で100本ほどを仕込んだ。初めてのワインはフルーティーだが、木が若いのもあり、味わいは軽めだった。

今年の収量は1トン弱だったが、7〜8年後には10トン弱を見込み、約6000リットル以上のワインを造る目算を立てた。今回の特区申請を受け、当初漠然と20年以降に計画していたワイナリー建設も再来年の夏に前倒し。厳しい自然相手の生業(なりわい)は「憧れの田舎暮らしというイメージはありませんね」と苦笑する今村さん。「早く採算に乗せて、山麓のおいしいワインを届けたいですね」

横の連携


未熟果を丹念に摘果する高橋さん=10月1日、つくばヴィンヤード

遠くに筑波山と宝篋山を望むつくば市栗原の丘陵地。「定年のないことをやりたいと思ってね。つくばは多様性のある街だから、興味本位でワインを造ろうと思う人がいてもいいと思うんだ」と高橋学さん(62)が額の汗をぬぐった。

市内の研究機関に勤めていた高橋さんは、定年前の14年に市の認定新規就農者に。現在では2ヘクタール弱の耕作放棄地を借り、ブドウの木を1000本植えた。土地は関東ローム層で栽培に最適とはいえないが、「山麓と比べて同じ市内で味がどう変わるか楽しみ」

畝間3メートル、樹間2メートルと風通しを良くした垣根にプチマンサンやメルロー、モンドブリエのほか、甲州やマスカットベーリーエーなど固有種を育て、今年は1.3トンを収穫。「近い将来には3トン(2000リットル)くらい欲しい。皆が気軽に飲めるワインが地元にあるって精神的に豊かなことだと思うよ」

高橋さんが自身の畑と共に情熱を傾けるのが、事業者同士が栽培技術や醸造技術、ブランド力強化、経営基盤強化などを学ぶ「いばらきワイン産業連絡協議会」の運営。先進ワイナリーの視察やブドウの栽培技術講習会などを企画し、事業者同士の横のつながりをつくっている。「土地も資金も、農業経験がなくても、誰もが参入できる環境が大事。僕自身がモデルケースのようなものだから」

ライスワイン(日本酒)でも有名な筑波山麓—。同市農業政策課では、栽培も醸造も100%の「つくば産ワイン」が商品化すれば外国人観光客なども取り込め、「つくばに新しい産業が興るのでは」と期待を寄せている。特区申請の結果は12月中に判明する。

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