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2017年7月24日(月)

自分の道は自分で決めなさい

吉村選手の背中押す父・弘義さん

去る6月、ドイツで行われた世界卓球選手権混合ダブルスで見事金メダルを獲得した吉村真晴(まはる)・石川佳純ペア。同種目の日本勢金メダルは48年ぶりの快挙に加え、誰もが諦めかけた苦境からの大逆転が大きな感動を呼んだ。そんな試合を吉村選手の父・弘義さん(土浦市、53歳)は冷静な目で観戦し「バック、フォアを強化しないとね」と分析。父であると同時にコーチとして厳しく・温かく息子を見守る。


指導は厳しいが心根は優しい弘義さん。「顔が怖いのは仕方ないよね」

弘義さんは那珂郡東海村の生まれ育ち。東海中学校で卓球を始め、入部してすぐに頭角を現し1年生でただ一人地区予選に出場。部を背負う逸材と期待されたものの、大事な試合の前日にスケボーで転び右手をけが。約1カ月、練習を休み左手のトレーニングに励んだ。

復帰後、右手の勘を取り戻そうと必死に練習したが、周囲はとうに自分を追い越していた。「当時、先生が言っていた、1日の休みは1年の遅れに匹敵するということを身を持って実感しました」。

試合に出られない悔しい3年間を経て高校でも卓球を選んだが、先輩たちの練習熱の乏しさに失望し2年でバスケ部に転向した。

時を待った息子

就職した会社に卓球台が2台あり、昼休みにラケットを振った。「やっぱりおもしろい」。眠っていた卓球魂が目を覚まし、社内に同好会をつくったほか地域のクラブチームにも所属して腕を磨いた。

結婚して長男・真晴さんが生まれると練習や試合に連れていくようになり、幼稚園年長になったころに「やりたい」とせがまれた。子どもの気まぐれだろうと「小学校に入ってからね」と濁していたが、小学校に上がった4月、「ぼく卓球やっていいんだよね」と一言。息子は父の言葉をずっと胸に秘めていた。

さっそく地元のクラブチームである東海ジュニア卓球クラブに入部し、空き時間があればほかの卓球場でも練習。1日3時間、父の厳しい指導についてきた。「まさか本気だったとはね。でも勉強も大事ですから、卓球は宿題が終わってからという条件付きでした」。

道を開くのは自分自身


全国大会でベンチコーチを務めた弘義さん(中)と小学生のころの真晴選手(オレンジのウェア)

指導の基本はメリハリ。宿題が済んだら練習、時には釣り、サーフィン、ゴルフにも連れ出した。

そして小2で全国大会ベスト8、翌年は2回戦で破れ、悔しさをばねに4年生で念願の優勝。試合ごとに強くなり周囲の期待も高まると、いつしか息子は将来を考え始めていた。選んだのは秀光中等教育学校(仙台育英学園)。家を離れて寮に入り、数カ月後に再会した時は言葉遣いも変わり一回り大きく成長。中3で山口県の野田学園中・高等学校に転校し、愛知工業大学を経て現在は名古屋ダイハツに所属。父母との暮らしはわずか12年だが、家族の絆は強い。

2011年の東日本大震災。当時、東海村に住んでいた弘義さん一家も被災しアパートに身を寄せた。ライフラインが絶たれ、5日ほど経って公衆電話でやっと真晴さんと連絡が取れたが、家族の窮状に「自分だけ卓球なんか続けていていいんだろうか」と悩んだ様子だったという真晴さん。当時高校3年生。父は「自分がどうしたいかが大事。自分の道は自分で決めなさい」と励ました。

真晴さんはその年から優勝を重ね、14年にはドイツへ。結果第一のプロの厳しさをたたき込まれ、帰国後に大躍進。16年リオ五輪出場の夢もかなえ、団体戦準優勝に貢献した。

未来の選手を茨城から

弘義さんは卓球場を開く夢を実現しようと50歳で勤めをやめ、15年に土浦に転居。知る人も少ない中で卓球用品店と卓球場を運営し、小学生から大人まで指導。特に子どもたちには「茨城から世界を目指してほしい」と期待を寄せる。

真晴さんの背中を追う弟・和弘さんも同じ愛知工大に進み奮闘。父は可能な限り試合会場に足を運ぶ。


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